お宝拝見

お手元にある貴重な品々、それにまつわるエピソードなどをご披露頂くコーナーです。
まず第一回として宗像道久さん(87年度入会)のコレクションから「浮世絵」と「青磁の坐像」をご披露頂くことにしました。ほかにも多数の逸品をお持ちですので、以降のご公開にもご期待を願います。

榎本晃治さんのお父上形見の鉋刃

榎本さんは、腕のいい大工さんであったお父上が愛用された品々を大切に所蔵されています。その中から、歴史的にも興味を惹かれる〝鉋〟にスポットを当てさせて頂きました。

形見の品々
形見の品々=左側は鉋の刃=左右とも最内側が”幻の東京オリンピック”ゆかりの品です
*刃の長さが異なるのは、「用いては研ぎ用いては研ぐ」・・を反復された証しです。

ベルには「東京」。使い減りした刃には「意匠登録」「一等」の文字などが認められます。

ベルには「東京」。使い減りした刃には「意匠登録」「一等」の文字などが認められます。ベルには「東京」。使い減りした刃には「意匠登録」「一等」の文字などが認められます。

≪幻の東京オリンピック≫

昭和12年(1937)7月に日・中戦争が勃発。以降、日本は戦いにのめりこみ、資源も経済も苦境に陥ります。国際的にも孤立が深まり、13年秋には競技施設の建設を始める計画でしたが、予算面でも立ち行かなくなり、同年7月、開催返上を閣議決定しました。
国の威信をかけたイベントは幻に終わりましたが、名残りはこうして残ったのです。
榎本さんのお父君も刻印を眺めるたびに、歳月の行き越し方をふり返られたと思います。

榎本さん語る
1936年7月に〝東京招致〟に成功、五輪景気を目当てに色々な商品に五輪マークが付けられたようですが、鉋の刃までに五輪を付けていたとは驚きでした。父が引退したのは70歳のころで、この刃は、30年働いた(刃長100mm、写真右当刃長50mm) ことになります。それでも切れ味は良く、鉋を箱にセットし鰹節を削る余生となり、初めて家族の目に留まるようになりました。
父1899年生まれ、小生1938年生まれ。よって父38歳の初 男児でした。この生年に五輪中止が決まったことを含め、見栄え の悪い古鉋の刃に不思議な繋がりを感じているこの頃です。

(70歳になりました)

皆様からのご投稿を歓迎いたします。あるいは、 取材をさせて頂きますので、ご応募よろしくお願いいたします。 自ら「お宝」との意識をお持ちであるならモノは問いませんので、 分野にこだわらずご紹介を頂きますようご連絡をお待ちしています。

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