俳句(はるひ句会)2015.9 通刊21号

2015年9月新作はるひ句会へようこそ!

句碑をたずねて

涼しさや 木思石語の 不動滝 鬼出て 滝へ音色を たしかむる
涼しさや 木思石語の 不動滝 鬼出て 滝へ音色を たしかむる

前号で荻城址が豊かな農地になったことを紹介した。今回は豊かな農地の決め手になった「不動滝」の由来を、幸田町の郷土史『荻の里』から辿ってみた。(要旨)

  1. 古来、荻地区には灌漑用の池がなかった。
  2. 幸田町の東を南北に連なる遠望峰山=とぼねやま;439m=から荻に注ぐ(北の尾浜川、南の前野川)水だけでは、荻地区の30町歩の水田には不十分であった。
  3. 明治26年以来、治水・利水計画が検討されたが、近在の部落との利害調整が困難で、水争いが常であった。
  4. 大正12年に荻の東方山麓に不動ケ池が出来たが、昭和2年の大旱魃によって干上がり、米の収穫が3割に留まった。このため堤防の3m嵩上げ工事に着手し、昭和4年に完成した。
  5. また昭和20年の三河大地震(M7.1)により、荻の田畑の一部に長さ90m、幅4m,段差30cmの陥没被害が発生した。原因は旧前野川の伏流水による。
  6. このため遠望峰山の治水・利水計画をたて、導管を大規模に敷設し、小規模な渓流を纏めて不動滝と明王滝ができ、不動ケ池と共に荻地区の農地改良が完成し、豊かな農地になったのである。

*幸田町では不動滝にキャンプ場を設け、近在の人々に親しまれている。

メンバー新作ご紹介 作者名(アイウエオ順)

1.≪課題句≫  =朝曇(旱・ひでりの朝曇の諺で、昼から暑くなる日は朝一時的にどんより曇ることをいう)=

大矢部俊子 課題句1
蔭山 政江 課題句2
鈴木 定夫 課題句3
鈴木 雅澄 課題句4
瀧本 憲宏 課題句5
徳永スエ子 課題句6
安田 公子(会友) 課題句7
宮川久美子 課題句8
山根 円蔵 課題句9
吉弘カスミ 課題句10

2.≪自由句≫

大矢部俊子
俳句特設1
蔭山 政江
俳句特設2
鈴木 定夫
俳句特設3
鈴木 雅澄
俳句特設4
瀧本 憲宏(新入会)
俳句特設5
徳永スエ子
俳句特設6
安田 公子(会友)
俳句特設7
宮川久美子
俳句特設8
山根 円蔵(新入会)
俳句特設9
吉弘カスミ
俳句特設10

3.お知らせ

次号の課題は「花野」(花野原、花野道、花野風)で、萩、芒、桔梗、釣船草など、秋の草花が咲き乱れる野原をいう。ご参考に・・

広道へ 出て日の高き 花野かな  与謝蕪村の句

吹き消した ように日暮るる 花野かな  小林一茶の句

大阿蘇の 浮かびいでたる 花野かな  野村泊つ月の句

加えて自由句を5句お送りください。締切りは10月15日です。

つれづれメモより 「敗戦忌」  鈴木定夫
 戦後70年の8月のある日、4歳年下の弟が久しぶりに遊びに来た。
 私達の家は昭和19年に、建物強制疎開のために壊されて、芝から目黒に引っ越した。
 そして昭和20年5月、空襲により家が焼けたので、私と母が父の実家である幸田町の叔父の家に疎開してきた。・・など旧懐の念を吐露していた。
 そのうち弟が姿勢を正して、昭和天皇の御製と言ってゆっくり語り始めた。様子が緊張していたので、思わずひらがなでメモをとり、意味の分かる言葉を漢字に直すと、

夏燕 軒を飛び交う ドローンの目

と。
 弟達は朝礼の時に全員で斉唱していたので覚えてしまったと言うが、弟が帰った後、パソコンで御製の由来を確かめてみた。「語り継ぐ学童疎開」を検索した結果、昭和天皇の御製ではなく、香淳皇后が11歳の皇太子を励ます(疎開されたのであろうか)ため、昭和19年12月23日の誕生日に、この御製と菓子一袋を賜った・・とあった。
 御製の本文は「世」と「身」が漢字で、あとは全部ひらがなであった。11歳の子でも読めるように・・と、嬉しい話であった。

私と同年輩のOBの方には、学童疎開をされた方も居られるでしょう。そこで一句

疎開児を 励ます御製 敗戦忌

鈴木定夫 〒444-0113 額田郡幸田町菱池農基17-1
電話(0564)62-2088    Eメール s-suzuki@sk2.aitai.ne.jp