俳句同好会 はるひ2017.9 通刊33号
2017年9月新作
かねて旧友から、岡崎の甲山中学校に句碑があると聞いていたので、学校の夏休み前に飛び込みで訪問した。職員室で最初に目が合った先生に、クルマの運転免許証を名刺代わりに差出して取材の希望を説明すると、早速「資料をお見せします」と、打てば響くのご対応で有難かった。
やがて分厚いファイルを持参され、「この資料を見られたのちに、校内を自由にご覧ください」・・と。(訪ねた甲斐あり!)私にとっては二重に嬉しく幸いな経験だった。
ファイルには、「甲山中学文学遊歩道案内・昭和55年度現在」とあり、句碑42基、短歌18基、詩・格言11基の石・木碑の配置図と、作品の内容・写真が整理して綴じられていた。
ざっと拝見している内に、高浜虚子による次の一句がとりわけ印象に残ったのでご紹介する。
俳句は〝花鳥諷詠〟を理念として、客観写生を行う風雅な文学・・と受け止めていたものの、
高浜虚子はなにゆえ闘志むき出しの句を詠んだのかな?と、・・句意の理解に時間が掛かった。
(大日本百科事典・小学館編などを参考にした)
- 高浜虚子は、一歳年長だった伊予中学校の級友・河東碧悟桐を介して、郷里(松山)の先輩・正岡子規の新俳句運動に参加した。
- 明治35(1902)年、子規の逝去により虚子は、有季・定型・歴史的かなづかいを理念として、子規のホトトギス(正岡子規の友人・柳原極堂創刊による俳句誌)を継承した。
- 一方、河東碧悟桐は、非定形・自由律の新風を起こした。
- 虚子は、碧悟桐主唱による新傾向の俳句によって、定形の破壊・季題無用の風潮の広まる兆しを警戒し、大正2年に「春風や・・」の句をもって、伝統擁護に立ちあがったと言う。
――以上のようないきさつを知るに及んで、私もようやくこの句意を理解できたのである。
メンバー新作ご紹介 作者名(アイウエオ順)
- 新会員ご紹介/佐藤武子さん
1.≪課題句≫ =「秋刀魚」=
蔭山 政江 | ![]() |
佐藤 武子 | ![]() |
鈴木 定夫 | ![]() |
瀧本 憲宏 | ![]() |
宮川久美子 | ![]() |
山根 円蔵 | ![]() |
吉弘カスミ | ![]() |
2.≪自由句≫
蔭山 政江 |
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佐藤 武子 |
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鈴木 定夫 |
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瀧本 憲宏 |
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宮川 久美子 |
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山根 円蔵 |
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吉弘 カスミ |
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3.お知らせ
次・11月(第34号)の課題は 『立冬(冬立つ、冬に入る、冬来る、今朝の冬)』 です。
傍題はお手元の歳時記による。 =締め切りは10月10日です=
◆お世話役のつれづれメモより
- 句碑などの選定にも見られる岡崎・甲山中学校の教育理念は、コピーして頂いた「甲山文学遊歩道」の資料による。
-
「環境は人をつくり、また人は環境をつくる」といわれるが、同校は「豊かな情操と逞しい想像力の育成」をめざしている。
その一つとして文学への関心、心情を育めるよう、校内の遊歩道を中心として、随所に詩、言、短歌、俳句などの文学碑を設置した。
文学碑の設置への配慮
- о 生徒の鑑賞に堪え、明るく勇気や希望を抱かせ、詩情を育むような作品。
- о 教科書に登場する人物の作品と、時代に配慮して代表的な作家や作品。
- о 校庭の草木に因み、風情にマッチし作品に相応しい場所を選ぶ。
- о 自然に目に触れるよう心がけ、国語の学習に生かせるよう配慮する。
- о 今後は、職員・生徒の作品など、ふれ合いや学習発展の場として親しみが持てるように心がけていく。――と、具体的に記されていた。
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- 高浜虚子の句碑は、「希望が丘」にあり、他に次の句碑も配置されている。
- 正岡 子規 1867(慶応3)年~1902(明治35)年 松山生れ 35歳没
河東碧梧桐 1873(明治6)年~1937(昭和12)年 松山生れ 64歳没*大日本百科事典に掲載
高浜 虚子 1874(明治7)年~1959(昭和34)年 松山生れ 85歳没
虚子は、碧梧桐の亡くなった翌年の1937(昭和21)年、親友であり、激論を戦わすライバルでもあった碧梧桐を悼み偲んでこの句を詠んた、とされている。
*wikipedia 虚子の作家評(編集)による。・・・虚子の人柄に親しみを強く覚えた。★
こうして虚子の「春風や」の句に出会い、俳句の有季・定型・歴史的かなづかいの重みを復習できた心境である。もし生まれ変われることが出来たら、岡崎の甲山中学へ入学などと、我知らず夢想してしまった、今回の「句碑をたずねて」の取材であった。
- 平成の付句
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鈴木定夫 〒444-0113 愛知県額田郡幸田町菱池農基17-1
電話(0564)62-2088 Eメール s-suzuki@sk2.aitai.ne.jp