名古屋ゴムの青年期

〝現場100回〟の教訓 研究室では合格だったのに・・・

以下は、御堂岡正則さん(07年度入会)の回想を中心に要約したものです。

ドアウエザストリップ(スポンジ製品)には接続の技術が不可欠です。車、とりわけ乗用車のドアは3次元のカーブや起伏があるのが普通で、開閉部に装着されるウエザストリップは、部位による当たり抵抗の違いを含めて、複雑微妙な装着条件をクリアすることが求められ、「合わせ品質」と呼ばれるほどの技術・ノウハウを必要としています。
ループ状に加工したうえドア周りに装着されますが、断面は全周同じではありません。
コーナー部、当たり抵抗の異なる部位などには、別に成形した異形断面の製品を接続して完成させます。接着技術は、品質面でも耐久性のうえからも重要なカギを握っています。

◆自信の〝量産化〟ゴーサイン。ところが・・・

入社前後の生産工程は、皮膜付の成形素材にスポンジ材を挟み、型で加硫接続する方法が採られており、耐久性の面で課題があった。そうした状況下・・
ある新規受注のウエザストリップに、新しく開発した接着剤を適用すべく実験を行ってみた処、接着強度はもとより耐候性も優れており、作業性の面でも大変に満足すべき結果が得られた。何らの不安も抱かぬままに、量産化へのゴーサインを発したのだが、意外な問題に直面した。
なんと量産直後に、車の組み付けラインで接続部がボロボロ剥がれてしまう・・
信じられないトラブルだった。顧客への信用上も、自体はきわめて重大だった。

◆懸命の原因追求・・さもあるべしの実情に行き当たって驚く

量産の現場へすぐ急行した。その結果、接着剥離は起こるべくして起こったものと判明した。実験の結果だけで結論を出していたのが間違いだったのである。
その現場は協力工場にあり、接続すべき端面を切り揃えた状態の製品が2階に保管され、接続作業は1階で行われていた。ところが・・同じ1階の工程で扱われているステアリン酸亜鉛がホコリのように浮遊していた。そして2階にある接続素材の端面にも、白く見えるほど付着しているではないか。なんと量産現場では、〝接続阻害剤〟を付けて接続を行っていたのであった。

◆直ちに手を打ち、一件落着

さっそく工程を大清掃すると共に、工程を変更して、接続面にステアリン酸亜鉛が付着しないよう改善を施した結果、剥離の不具合は解消した。
今では当たり前のことであるが、実験結果だけではなく、量産工程の環境や作業条件を含めての品質チェックがいかに大切か、を痛感させられる体験だった。

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