名古屋ゴムの青年期

初めてのシボ加工金型による号口(量産)試作

白髭誠男さん(01年度入会)の回想を中心に要約したものです。

皮をなめす際、もんだり絞ったりすることを「シボ付け」と言います。その質感をプラスチック成形金型によって再現する方法は今でこそ一般的ですが・・以下のエピソードは初めてシボ加工を施した金型による号口試作の貴重な想い出話です。プラスチック成形金型へのシボ加工には皮革模様のほか、木目、岩目、砂目、なし地などがあります。

◆上型から取り出せなかった成形品

最も早く号口試作型へのシボ加工を行ったのは、パブリカ用のメーターフードであった。ところが困ったことに、成形品が上型にがっしりと張り付いて取り出せなかった。成形条件、離型剤の変更等々、種々工夫をしてみたが解決できない。
結局、成形機から型を下ろして分解したうえで成形品を取り出す。再び型を組み立てて成形機に装着する、という有様になってしまった。
ワンショット終えるたびにそれを反復、必要数(号口試作品・約10台分)を成形するのに、その都度1時間以上を要するという大変な作業であった。

◆シボ加工への知識・経験不足が要因

それまではシボ加工の経験がない。金型への加工の深さの細かな検討や、金型の抜き勾配、成形品の突き出し構造などにおいても、事前の研究や配慮が不足していたために招いた不具合だった。「新たな試みはどんな結果を伴うか判らない」
・・それを身にしみて痛感させられたものである。

◆量産型には号口試作の反省点を反映して問題解決

量産型には、前述したような思いがけない経験と反省を活かして、シボの深さ・ 金型構造(突き出し方法)などを大幅に改善した結果、問題を解決できた。
それ以降、シボによる意匠効果への評価が定着してゆく。内装品には幅広く適用されるようになり、質感的にも目新しさを感じさせないまでに普及して行った。

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