サステナビリティ

社長メッセージ 取締役社長 宮崎直樹

大きな環境変化にも柔軟かつ迅速に対応して、持続的な成長を実現します。

株主・投資家をはじめとする全てのステークホルダーの皆様に謹んでご挨拶申し上げます。

大きな環境変化を受けて

米中間での関税引き上げ、NAFTA 協定の見直し、イギリスのEU離脱問題など、世界経済は不透明さを増しています。これらの影響は、自動車の最大市場である中国の経済減速や欧州経済の減速、米国経済の減速懸念などという形で顕在化しつつあります。当社としては、こうしたリスクに対するマネジメント体制を整備し、外部環境の変化に柔軟かつ迅速に対応して持続的に成長できる企業を目指しております。

自動車産業においては、異業種との業務提携、共同開発など競争力強化に向けた取り組みが活発化しています。当社もこれまでのやり方や慣例にとらわれることなく、新しいことにチャレンジする「進取の気性」を持って事業を進め、安心、安全、快適な新技術・新製品を市場にいち早くお届けすることが、社会への貢献につながると考えております。

2018年度を振り返って

昨年度は、ゴム・樹脂分野の知見、グローバルネットワークといった当社の強みをさらに磨くとともに、仕入先様、ビジネスパートナー、ベンチャー企業の皆様との「総力を結集」して事業運営に取り組んできました。

5月に、中長期経営計画「2025事業計画」を策定し、「大きな環境変化に柔軟かつ迅速に対応し、世界のお客様へ「安心」「安全」「快適」をお届けするグローバルカンパニー」を目指す姿に掲げました。2025年度の経営目標である売上高1兆円以上、営業利益率8%、ROE10%の実現に向けて、「活動の3本柱」を定めました。

活動の柱Ⅰ「イノベーション・新モビリティへの挑戦」に関して、具体的な活動を挙げますと、製品開発において、ゴム・樹脂に関する当社のコア技術を用いた自動車部品に、電子技術を融合させたモジュール製品として、車載製品では世界初となる共振式のワイヤレス給電技術を用いた「LED照明付きエアコンレジスター」を開発しました。

また、一昨年より協働してきたベンチャー企業様と、電気で機能する人工筋肉e-Rubber を用いて心臓の鼓動を極めて正確に再現できる手術訓練シミュレータ「SupeRBEAT」のプロトタイプを開発しました。こうした自社技術の補完、新技術探索を推進するために、コーポレートベンチャーキャピタル専門組織を設置しました。

活動の柱Ⅱ「伸びる市場・伸ばせる分野へ重点戦略」に基づくグローバルでの更なる事業拡大に向けて、中国では生産子会社の合併や完全子会社化を行い、中国全体での最適な生産体制を整備しました。また、経営判断を迅速化し、効率化な事業運営を行うため、地域統括会社を持株会社へ変更し、当社にとって初となる華中地区の拠点にも資本参加しました。

インドでは、デリー近郊のグルガオンに技術・営業拠点を新設し、現地での製品開発機能を強化しました。さらに、グジャラート工場の稼動開始により、現地での生産体制を拡充しました。

また、インドネシアでは安全規制強化を背景とするエアバッグの大幅な需要拡大などに対応するため、新会社を設立しました。

活動の柱Ⅲ「生産現場のモノづくり革新」については、モノづくりの現場でTPS(トヨタ生産方式)に基づく生産性向上活動に加えて、新たにIT技術を活用した効率化にも取り組んできました。製造工程で収集したデータを蓄積しビッグデータ解析を行うことで、ネック工程の早期解消を図っています。

以上の3本柱の活動を支える事業基盤の強化として、11月には、17カ国・地域から65のグループ会社のトップら約130名が一堂に会する「TG グローバルサミット2018」を開催し、経営目標の達成に向けた具体的な取り組みや、各地域・事業領域の戦略を共有しました。

2019年度は「圧倒的なスピード感」で実行する年

2025事業計画で掲げた重点取組みを「圧倒的なスピード感」をキーワードに実行していきます。

これまでのやり方や慣例にとらわれず、徹底的に業務を効率化し、各取組みのスピードを上げて参ります。
具体的には

活動の柱Ⅰ:e-Rubber、パワー半導体などの新技術やCASE・モジュール化に対応した新製品の開発をスピードアップします。また、コーポレートベンチャーキャピタルを通じたスタートアップ企業との連携も強化して参ります。

活動の柱Ⅱ:販売の伸びが期待される中国・インドにおいて、収益性を確保しつつ成長できるよう取り組んで参ります。製品開発では、ミリ波レーダー対応エンブレム等の内外装部品の高付加価値化や、エアバッグ部品のグローバル供給体制の最適化を推進します。

活動の柱Ⅲ:経営目標の達成に向けて、収益性の向上が課題であると捉えております。高い収益性を誇る米州を軸に連結業績の向上を図り、環境の変化を見極めながら、欧州地域全体での事業の再構築を加速します。

ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み

昨年改定した「経営理念」にはその考えをすでに反映しておりますが、昨今、世界的にESG(環境、社会、ガバナンス)の考え方が注目されております。当社ではその概念が生まれる前からそれぞれの分野に注力して参りました。

環境保全の分野では、日本経済新聞社による「第22回環境経営度調査」の企業ランキングの製造業部門において、昨年の10位から順位を上げ、3位にランクインしました。工場敷地内での植樹活動やビオトープの設置などによる生物多様性の促進、生産時に発生する排水の設備冷却水などでの再利用やゴムのリサイクル技術などによる資源循環、金属からの樹脂化による製品の軽量化といった取り組みを国内外のグループ会社や仕入先様と一体となって推進したことなどが高く評価されたと受け止めております。

社会活動の分野では、地域社会に根ざし、地域とともに発展する企業を目指し、従業員による社会貢献活動を世界各地で積極的に行っており、今後もこれを継続して参ります。また、事業を支える人・職場づくりに取り組んでおり、グローバルで活躍できるプロフェッショナル人材の育成や上司・部下の双方向コミュニケーションの促進などに取り組んでおります。

ガバナンスの分野では、業務の適正や効率を確保するために内部統制システムを整備・運用しています。また、松本真由美氏の取締役就任により、社外取締役・社外監査役による経営の監視・監督の実効性がより一層、高まったと認識しております。

創立70周年を迎えて

当社は2019年6月15日に70周年を迎えることができました。これもひとえに皆様のご支援の賜物と深く感謝しております。

2015年に国連では、2030年に向けた「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が採択されており、近年、実現に向けた気運が高まってきております。当社としても、SDGsに賛同し、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。今後はより一層、活動を強化・充実し、企業価値を高め、新たに幕を開けた令和の時代にも持続的な成長を実現する企業を目指して参ります。

取締役社長 宮﨑直樹