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ゴムの資源循環へ、独自技術で挑む

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地球環境を守るため、紙やプラスチック、鉄など、私たちの身のまわりの多くのもののリサイクルが進んでいます。一方、ゴム製品はリサイクルが難しく、そのほとんどが廃棄後に焼却されてきました。しかし、焼却時に多くのCO2を排出することから、ゴムを原材料に戻して再利用することが求められています。
雨水や埃、騒音の車室への侵入を防ぐゴム製品(ウェザストリップ)で、世界トップレベルのシェアを持つ豊田合成は、ゴム廃材を再生できる独自の「脱硫再生技術」によって、脱炭素に向けたゴムリサイクルで業界をリードしていきます。

当社のウェザストリップ製品
当社のウェザストリップ製品

01独自の脱硫技術で高品質な再生ゴムを実現

ゴム製品を原料のゴムに戻すには、ゴムに弾性を持たせる役割を果たす分子の結び目を解く工程(脱硫)が必要です。一般的な脱硫方法は、「パン法」と呼ばれる方法が主流です。ゴムと再生剤を混ぜ、窯で煮るイメージに近く、高温・高圧・長時間を要するため、ゴムへのダメージが大きく、品質の劣化が課題でした。
豊田合成は環境意識が高まり始めた1990年代、高品質を追求した「脱硫再生技術」を独自に開発し、工程内で発生するゴム廃材のリサイクルを実現しました。2軸のスクリューでゴムの廃材を押し出しながら、架橋点だけを切断するのに最適な熱と圧力を加えることで、短時間で効率よく未加工のゴムに近い品質で再生できます。

■脱硫とは
ゴム中には、主鎖(C-C結合)と、加硫によって生成する加硫結合(C-S結合とS-S結合)がある。適切なエネルギーを与えることで加硫結合だけを切断し、ゴムの特性を取り戻す。

脱硫とは

■豊田合成の脱硫技術の仕組み
スクリュー2本を高速回転させ、脱硫に必要なエネルギーを与える。スクリューの形状、回転数、温度設定などを最適に保つことで、ゴム分子の結合を選択的に切断する。

豊田合成の脱硫技術の仕組み

■再生ゴムの品質比較(パン法との比較)

再生ゴムの品質比較(パン法との比較)

02脱臭技術で再生ゴムの臭いを抑制

再生ゴムの一番の課題は臭いです。原料由来、薬品由来のほか、脱硫再生で化学反応を起こす際に発する臭いなど、200種以上の臭気成分が混ざり合って強い臭いを発します。そのため一般的な再生ゴムは、アスファルトに混ぜるなど屋外で使用されるケースがほとんどです。豊田合成は人が不快に感じる臭気成分を絞り込み、水に溶解・分散させて蒸気と一緒に脱気させる脱臭技術を確立しました。
臭いの強さを数値化する実験では、パン法に対し、10分の1以下という結果を得ています。今後は、工程内で発生する臭いを取り除くだけではなく、臭いを発生させない脱硫再生工程にも挑戦する考えです。

■脱臭技術のメカニズム
臭気成分は水と結合しやすいことに着眼。脱硫反応中に水を注入することで、臭気成分を水に溶解させ、蒸気と一緒に脱気させる。

脱臭技術のメカニズム

■再生ゴムの臭いの比較
熱脱着GC/MSによる、再生ゴムから揮発するガス量の分析。他社Cを100としたときの相対評価。

再生ゴムの臭いの比較

03リサイクルの拡大につながる国際認証を取得

2023年、ウェザストリップの主力工場である森町工場では、社内廃材を活用した事例として日本で初めて、再生材などで生産された持続可能な製品の国際認証である「ISCC PLUS認証」※3を取得しました。
これまで再生ゴムは一部の製品に混合して活用してきましたが、その配合比率は数パーセントに留まっていました。脱硫技術・脱臭技術の進化により、今後は配合割合を20%に引き上げる予定で、ウェザストリップ(オープニングトリム)1本あたりのCO2排出量は新材比で10%低減できます。さらにISCC PLUS認証におけるマスバランス方式を適用し、環境価値の高いリサイクル製品として市場に投入することで、当社の脱硫再生技術を広く知っていただき、再生ゴムの活用を広げていくことにもつながると期待されています。

※3 ISCC(International Sustainability & Carbon Certification)による国際的な認証で、バイオマスやリサイクル原材料の持続可能性認証プログラム。

■マスバランス方式の活用とは?
再生ゴムの製品への配合割合を一部製品に理論的に重点配分することで、環境価値の高い製品として市場投入できる。

マスバランス方式の活用とは?

04ゴムの資源循環ができる社会に向けて

森町工場では2023年度中に2本目の脱硫ラインを稼働させ、年間1,200トンの「合成ゴム」廃材を再生できるようになります。また、海外拠点にも脱硫再生ラインを展開する計画を検討中で、ゴム廃材の地産地消を目指します。将来的には、廃車からゴムを回収する循環システムの確立を目指しており、カーメーカーなどとも連携を深めていきます。
さらに、「天然ゴム」の脱硫再生にも実験レベルでは成功しており、早期実用化を図っていきます。

開発者の声

社会全体を巻き込んだゴムリサイクル事業の構築をめざす

当社の源流は豊田自動織機製作所のゴム研究部門であり、長年培ってきた高分子材料の知見が強みです。欧州を中心とした使用済みの自動車のリサイクル法(ELV指令)による、再生材の活用気運の高まりと自動車業界における将来的なゴムのリサイクルのニーズを見据え、高分子材料技術で業界をリードし、脱炭素社会に貢献していきます。

材料技術部 グループリーダー 袖山清和さん

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