豊田合成株式会社 豊田合成株式会社

FCEVの普及を支える技術。
高圧水素タンクで脱炭素に挑む。

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温室効果ガス(CO2)の増大による急激な気候変動を背景に、走行時にCO2を排出しない電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCEV)などの普及が期待されています。なかでも水素で走るFCEVは社会全体での水素の利用を促す役割を担います。FCEVの拡大に不可欠な航続距離の延長やコストの低減を、豊田合成の樹脂技術が支えています。

01MIRAI、3本目のタンク

タンク内の「水素」と空気中の「酸素」を化学反応させて発電した電力で走るFCEV。トヨタ自動車が2020年に発売した2代目MIRAIは1回の水素充填で走れる航続距離を延ばすため、初代MIRAIよりも1本多い3本のタンクを搭載しています。豊田合成は20年以上にわたり培った高圧水素タンクの技術を生かし、車両後部に搭載された3本目のタンクの生産を担っています。

FCEVの仕組み

FCEVの仕組み
FCEVの仕組み

02より多くの水素を貯蔵するために

高圧水素タンクの役割は水素を効率的に貯蔵すること。そこで密閉性と耐圧性を高めるため3層構造としています。一番内側の層である「A.樹脂ライナ」は分子が小さく物質を通り抜けやすい水素の透過を抑える特殊な分子構造を持った樹脂製のカプセルです。ここに水素ガスを700気圧まで圧縮して貯蔵します。水深7,000メートルの深海と同じ高圧に耐えられるよう「B.炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」という鉄より軽く強度も高いことから飛行機の機体にも使われる素材を何層も巻き付けています。一番外側の層には、このCFRPの耐圧層を保護するために「C.ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)」を巻きます。

高圧水素タンクの役割

2代目MIRAIのタンクはトヨタ自動車と豊田合成が共同で開発し、初代のタンクより性能を高めています。耐圧層の構造や生産方法の工夫により、耐圧強度を保持しつつ、3層の中で最も厚みのある耐圧層を極小化して内容積を増やし、水素の貯蔵効率(タンク重量に対する水素貯蔵量の割合)を約1割向上させました。コンピュータを用いたシミュレーション技術を活用し、最も強度の出るCFRPの巻き方を考案。さらに樹脂ライナも材料と工法を見直して気密性を高め薄肉化しました。

高圧水素タンクの役割

03生産性向上の取り組み

工程の時間短縮などにより生産性も高めました。高圧水素タンクの工程は①成形、②溶着、③フィラメントワインディング(FW)、④硬化、⑤検査の5つ。この中で、樹脂ライナの②溶着工程ではレーザー溶着から加熱溶着(非接触の赤外線溶着)に変更し、加工時間を大幅に短縮。溶着方法の変更により、溶着不良による樹脂ライナの強度・伸びの低下を抑えることにも成功し、不良率低減と溶着品質の安定化を実現しています。さらに、多くの時間を費やしていたCFRPとGFRPを巻く③FW工程と、その後にCFRPとGFRPに含まれる熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)を加熱して固める④硬化工程を改善しました。CFRPを高速で巻けるように独自の制御プログラムを開発し、巻き時間を短縮。さらにエポキシ樹脂の添加物を工夫し、硬化時間も大幅に短縮しました。

01:成形 金型へ樹脂を流して容器(樹脂ライナ)を成形する。 02:溶着 2つの樹脂ライナを赤外線で溶かしてつなげる。 03:フィラメントワインディング 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を樹脂ライナに巻きつける。 04:硬化 熱風をあてることで、CFRP・GFRPを硬化させる。 05:検査 気密性・耐圧強度などを検査する。

04水素の利用促進に向けたさらなる挑戦

豊田合成では2022年10月から、商用トラック向けの大型のタンクの生産を開始しました。商用車に限らず、バイクや船舶、鉄道など、各種モビリティへの搭載を視野に、サイズや耐圧性能などのバリエーションを拡大していきます。同時に、水素を家庭でも手軽に持ち運べる「ポータブル容器」や小型で大容量のタンクを実現する材料の開発などにも挑みます。

開発者の声

過去の知見と技術革新の集大成が高圧水素タンク

高圧水素タンクの量産化は、一朝一夕に成し遂げられたものではありません。FCEVに車載する高圧水素タンクの開発は2002年からですが、天然ガス(CNG)自動車用燃料タンクの開発は1995年から開始しました。長年に及ぶ技術革新と知見の蓄積があったからこそ、安全かつ高品質な高圧水素タンクを実現できたのです。
開発には紆余曲折もありましたが、開発継続を判断した経営陣の先見の明と、挫折してもあきらめない技術者たちの想いが詰まっています。この想いを胸に、今後は車載の自由度を上げられるようなタンクの開発などにも挑戦していきたいと考えています。

FCEV企画 技術室長 亀田宜暁さん

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