豊田合成株式会社(松浦剛社長)ら(以下、「豊田合成」という)は、日亜化学工業株式会社(以下、「日亜化学」という)が保有する窒化ガリウム系化合物半 導体発光素子に関連する特許のうち、下記特許権に関する無効審判(平成11年審判35005号、無効2000-35220:併合審理)について、特許庁が 下した平成13年3月27日付「特許無効排斥(権利有効)の審決」を不服として、東京高等裁判所に審決の取消を求める訴訟を提起しておりました。東京高等 裁判所第18民事部(永井紀昭裁判長)は、本日(5月14日)、特許庁が下した「特許無効排斥の審決」を取消す旨の判決(実質的に特許を無効とする判決) を言い渡し、当社の主張が認められました。 尚、この特許は日亜化学が豊田合成に対して提訴していた6件目の侵害訴訟(東京地方裁判所平成10年(ワ)第28407号)の対象特許であり、今回の東 京高等裁判所の判決により、この侵害訴訟の日亜化学の請求は直ちに棄却されるべきものと考えます。 昨年から、下記の表のとおり、豊田合成は、日亜化学の特許の有効性を争っているGaN系青色発光ダイオードに関する東京高等裁判所における審決取消訴訟において、3件連続で勝訴しています。
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日亜化学の特許 |
特許第2780691号 |
特許第2778405号 |
特許第2751963号 |
特許庁の判断 (審決日) |
有効 (平成12年6月16日) |
有効 (平成11年12月6日) |
有効 (平成13年3月27日) |
東京高裁の判断 (判決日) |
無効 (平成13年6月13日) |
無効 (平成13年10月2日) |
無効 (平成14年5月14日) |
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記 |
1.事件番号 |
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2.対象権利(特許第2751963号)(特許請求の範囲の請求項1以上) |
(1) |
有機金属気相成長法により、 |
(2) |
次に成長させる窒化ガリウム層よりも低温で成長させるバッファ層を介して、 |
(3) |
バッファ層よりも高温で成長させた該窒化ガリウム層(GaN)の上に、原料ガスとして、 ガリウム源のガスと、インジウム源のガスと、窒素源のガスとを用い、同じく有機金属気相成長法により、窒化インジウムガリウム半導体層(InGaN)を成長させることを特徴と する |
(4) |
窒化インジウムガリウム半導体の成長方法 |
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3.審決取消訴訟提起の理由 |
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【特許庁による無効排斥審決の内容】 GaN層の上にInGaN層を成長させるという公知資料はあるが、それに低温バッファ層を組み合わせることは容易ではない。また、本件発明は、他の公知資料と同一でもなく、また他の公知資料からも容易に推考できない。 【当社の主張】 特許庁は新規性・進歩性の判断を誤っており、特許は無効である。 |
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4.東京高等裁判所の判断 |
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本件発明は、基板/第1のバッファ層/GaN層 /GaInN層との層構成が示唆されている刊行物及び低温成長バッファ層の上に成長させるGaN層に関する周知慣用の技術に基づいて、当業者が容易に想到 し得たものと認めることができる。なお、名古屋大学大学院工学研究科に在籍していた小澤隆弘氏(注:その後工学博士号を取得された。)によって、1987 年(注:本件特許出願の約5年前)ころ、既に、サファイア基板/低温成長AlNバッファ層/GaN層/InGaN層という構成のものが作製されていたこと は、当時の技術水準を示すものであり、上記刊行物の開示に基づいて、本件発明が容易に想到し得たことを推認させる事情の一つである。 |
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