豊田合成株式会社 豊田合成株式会社

環境にやさしい水浄化。
水銀灯から除菌用LEDへ

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消毒・除菌作用に優れることから、かつて農薬などに広く使われていた水銀。水俣病などをきっかけに、健康被害や環境破壊を引き起こす有害物質であることが判明しました。そこで、2017年には国際条約「水銀に関する水俣条約」によって、水銀の採掘禁止のほか、水銀を使った蛍光灯・電池などの製造や輸出入が制限されることになりました。ただし、上下水道などの殺菌に用いられる低圧水銀ランプは、代替品がないことから適切な管理の下での使用が認められています。豊田合成はウイルス・殺菌の除去に有用なUV-C(深紫外線)LEDに着眼し、水銀フリーの社会に向け、UV-C LEDの性能向上と除菌製品の開発・提案を進めています。

※直管蛍光灯の製造と輸出入を2027年末までに禁止(使用と販売は許可)、水銀を使用したボタン型電池や化粧品、水銀含有触媒を使用するポリウレタンについても25年末までに製造や輸出入を禁止

01高まるUV-C LEDへの期待

UV(紫外線)とは、可視光線より波長の短い400ナノメートル(1ミリメートルの100万分の1)以下の光のこと。UVの中でも特に波長の短い280〜100ナノメートルの光はUV-C(深紫外線)と呼ばれ、DNAの鎖を断ち切り、微生物の機能を失わせる(不活化する)働きがあります。
UV-C LEDは、水銀を使わないだけでなく、水銀ランプに比べて、瞬時に点灯できることや、低い電圧でも動作すること、小型であることなどの特長があり、医療や農業などさまざまな分野での活用が見込まれます。また、浄水場などで消毒に用いられる、塩素が効かない有害な微生物「クリプトスポリジウム」も除菌できることから、安全な水の供給のための活用への期待も高まっています。

■UV-C(深紫外線)とは
深紫外線は遺伝子情報を破壊するため、ウイルスや細菌を除去する効果があります。(太陽からの深紫外線はオゾン層や大気ではほとんど吸収され、地表には降り注ぎません)

UV-C(深紫外線)とは

■従来の除菌用光源(水銀ランプ)との比較

従来の除菌用光源(水銀ランプ)との比較

02青色LEDで培った知見を応用

豊田合成は、ノーベル物理学賞を2014年に受賞した赤﨑教授・天野教授のご指導の下、1986年から青色LEDの研究を開始し、1991年に世界で初めて開発に成功、1995年には量産化を実現しました。青色LEDは窒化ガリウム、UV-C LEDは窒化アルミニウムと、共に窒化物半導体を主な素材としており、サファイヤ基板上でチップ(素子)を形成する原理も同じであることから、長年の青色LEDの開発・生産で培ったノウハウや技術力をUV-C LEDの開発に応用しています。

青色LED
青色LED

一方、青色LEDと大きく異なるのが、光を拡散させるレンズの素材です。通常は樹脂やガラスを使用しますが、UV-C LEDは透過率が低いため、石英ガラスという透明度の高い特殊レンズを使います。石英ガラスは自ら光を吸収する性質があり、効率よく光を取り出せないという課題があります。
電力をより多くの光に変え、光の出力を高めるほど除菌効果も高くなるため、豊田合成では、光の取り出し効率を改善する開発に力を注いでいます。
2021年には、環境省の実証事業として、高効率で長寿命なUV-C LEDの開発が採択され、豊田合成は名城大学、名古屋大学、東北大学、東京大学、WOTA株式会社と共に、産官学によるプロジェクトを進めています。かつて共に青色LEDの研究開発に取り組んだ天野教授の研究グループも参加しています。水銀ランプを代替できる日が少しでも早く訪れるよう、プロジェクトの成果が待たれます。

UV-C LED
UV-C LED

03UV-C LEDの活用拡大の取り組み

豊田合成は、UV-C LEDを用いた製品開発にも力を入れており、その一つが水浄化ユニットです。水をUV-Cで効果的に浄化するには、水の流れ方(流動性)や光の照射方法も鍵となります。自動車部品の樹脂成形で培った流体解析技術を応用し、ユニット内部での水の滞留時間を長くし、UV-Cの光を効率的に照射できるよう、構造設計や光の反射率を検証しました。また現在のUV-C LEDは多く発熱することから、放熱性も考慮し、内部を通る水でLEDを冷やせる構造としました。
その結果、1分間で8リットルの水を除菌できる「高い除菌性能」と、従来品の1/3サイズで手のひらにおさまる「小型化」の両立を実現。限られたスペースでも設置でき、除菌機能付きのエコキュートなどに採用されています。
さらに、2024年4月には、1チップで200ミリワット級の光の出力(350ミリアンペアの電流での駆動時)を実現したUV-C LEDを開発しました。LEDの素子構造などを改良し、取り出せる光の量を従来の約4倍増加、除菌能力は約3倍に高まりました。国内外でサンプル販売を始め、水や空気などの除菌用途での利用拡大を推進しています。将来的な水銀ランプの代替も含めてUV-C LEDの活用領域を拡大し、より衛生的で安心・安全な暮らしの実現に貢献します。

開発者の声

UV-C LEDで世界中にきれいな水を届けたい

新興国など、水道インフラが整っていない地域は少なくありません。将来的に水問題を抱えている人々にUV-C LEDを活用した浄水場を届けたいと思っています。大型設備の導入が難しければ、まずは蛇口に小型の水浄化ユニットを取り付けるだけでも、安心して水を使えるようになります。製品開発を通じて、誰もが、きれいな水にアクセスできる社会づくりの一助になれたらうれしいです。

ライフソリューション第1技術部 部長 豊田優介

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