多様な従業員の自己実現を通じ、
人の無限の可能性を引きだし、
企業価値向上につなげていく
私たちは「誠実な事業活動」を経営理念に掲げ、モノづくりを通じて社会に寄与するために、その基盤となる人材育成や働きやすい風土づくりに取り組んでいます。また、人権尊重を重要課題と捉え、国内外グループ会社や取引先様と様々な活動に取り組んでまいります。
従業員との関わり
2030事業計画の実現に向けた人材戦略
当社は、2030年事業計画において、経済的/社会的価値を再定義し、それを実現するために事業構造の改革を進めるとともに、環境の変化に柔軟に対応し、新たな価値を創出できる「高分子型組織」をめざして、人と組織の活性化に取り組んでいます。
当社が社会に提供する価値の源泉は「人」にあります。ゴムや樹脂といった高分子技術によって培われた専門力と、それを製品として形にする組織力を結集し、「高分子型組織」として2030事業計画で掲げた事業成長と構造改革を推進するため、私たちは次の2つのテーマに基づく人材戦略を進めています。
1. 人材ポートフォリオに基づく配置・育成・確保
事業構造の改革を実現するため、要員構造の転換を進めています。必要な人材タイプとその専門性を「人材ポートフォリオ」として体系化したうえで、計画的な育成、適切な配置、確実な確保を進めるとともに、メンバー一人ひとりの成長を支援し、キャリア形成を促進していきます。
2. 多様な人材のウェルビーイングの実現
事業成長を持続的なものにするためにも、メンバーのウェルビーイングの向上は欠かせません。心理的安全性を確保しエンゲージメントを高めることで、メンバーが支え合い、最大限の力を発揮できる組織・職場環境を整えていきます。
これら2つのテーマを軸とした人材戦略を通じて、当社が持つ高分子技術の専門力と組織力を最大限に活かし、「高分子型組織」として経済的価値と社会的価値の両立を目指す持続的な事業成長を実現していきます。
■2030事業計画と人材戦略

人材ポートフォリオに基づく配置・育成・確保(事業戦略と人材戦略の連動)
事業成長・事業基盤強化を支える取り組みとして、これまでも中期での要員計画を立案する中で、各部のニーズに基づき強化分野の必要人員数を整理し、既存業務の効率化を進めることにより、要員構造の転換(強化分野へのリソーセスシフト)にチャレンジしてきました。
今後、2030に向けた人材戦略として、要員構造を変えていくというこれまでの方向性はふまえつつ、2030事業計画の実現に向けて全社的な重点強化分野と必要人材の要件をあらためて整理し、事業ポートフォリオに基づいた人材ポートフォリオとしてまとめることで、量(人員数)の管理だけでなく質の管理を強化していきます。
当社では、2030事業計画の実現に向けて強化したい人材タイプを明確にするため、人材ポートフォリオにおける「人材の3本柱」を下図のように定義しました。
■事業戦略と必要な人材

■人材の3本柱
重点事業推進人材 | 2030事業計画の重点事業に直結するテーマを担う人材 |
---|---|
事業基盤強化人材 | 事業を横断して、事業基盤のレベルアップを担う人材 |
次世代経営人材 | 上記2つをリードする次世代経営リーダー・海外拠点トップ |
これらをさらに「15の人材」タイプに層別、各々の専門性を“あるべき人材ポートフォリオ”として整理して、現有人材と2030事業計画の実現に向けた必要人材とのギャップを洗い出し、計画的な人材の確保・配置・育成計画の立案につなげていきます。
併せて、従業員個人のキャリア形成や成長を実現していくためにも、人材ポートフォリオを活用しながら、目指したいキャリアイメージの具体化や必要な専門性の習得を促していきます。
重点事業推進・事業基盤強化を支える人材
「人材の3本柱」のうち、1つめの柱である「重点事業推進人材」は、2030事業計画の重点事業である「セーフティシステム」「内外装」「材料/新事業・新製品」の開発に携わる人材とし、事業計画実現に向けて配置・確保により力を入れていきます。
人材ポートフォリオで必要人材・専門性を明確にすることで、社内人材のリソーセスシフトの推進とともに、専門スキルを持った新たな人材の採用も強化していきます。
2つめの柱である「事業基盤強化人材」は、社内全体の各事業を横断する形で、2030事業計画の実現に向けて基盤となる機能を支える人材です。
重点地域(グローバル)での売上の拡大や生産強化、DXを進める上で必要な人材など、重点事業推進人材と同様に、人材の確保・配置・育成を進めていきます。
■必要な人材(例)

次世代経営人材の確保と育成
3つめの柱は、将来の経営を担う「次世代経営人材」です。将来の経営を担う人材の計画的育成のため、経営戦略上の重要ポストと職責遂行に資する幹部要件を明確化し、サクセッションプランによる候補者の選定・計画的な教育・配置(タフアサインメント)の仕組みを導入しています。
海外拠点のナショナルスタッフ幹部登用および育成も進めており、各地域において積極的な登用を加速するために、2021年度に、ナショナルスタッフ幹部(副社長以上)登用の基本方針・ターゲットを定め、実現に向けて各事業体にて取り組みを進めています。
また、2025年までにナショナルスタッフ幹部比率40%達成を目指し、各地域でハイポテンシャル人材の評価・育成計画の作成を進めています。主な施策としては、ナショナルスタッフ幹部候補への「経営スキル基礎研修」「課題設定型問題解決研修」の実施などによりナショナルスタッフの育成を進めているほか、地域でのサクセッションコミッティを米州、東南アジア、中国で開催し、幹部後継者候補の育成・採用の活動状況や課題を共有しています。

多彩な教育プログラムを提供
当社で働く上で必要な能力・スキルの向上のために、仕事の基本である「問題解決力」「コミュニケーション」を柱とした 「チームで働く力」、そして強い現場力のための「基本技能」の3つの柱で人材育成を促進しています。また、事業環境の変化へ対応するため、変革を実現する「プロジェクトリーダー」の育成や、DXを推進するための「デジタル人材の育成」の研修も実施しています。
従業員のキャリア自立に向けては、キャリアデザイン研修なども実施し、eラーニングでの自己研鑽も促し、自ら考え、行動ができる、自発性の高い従業員の育成にも取り組んでいます。
■階層別教育体系

若手OJT制度
若手が入社後3年間で独り立ちをするための制度「若手OJT制度」を導入しています。PDCAサイクルに沿った仕事ができるように、職場でのOJTと研修の両輪を回し、若手の早期育成を図ります。
また、入社2年目・4年目・6年目の節目にもヒアリングを行い、能力発揮や個々の成長の把握と育成課題の早期発見・対策にも取り組んでいます。

製造現場の技能力を高める「専門技能伝承道場」「保全技能伝承道場」「金型技能伝承道場」
生産現場のモノづくり力を高めるためには、技能員一人ひとりの技能向上は欠かせないため、「技能重視の風土の醸成」を基本方針に、2019年度に3つの道場を立ち上げました。
「専門技能伝承道場」は、管理監督者へ監督業務だけでなく専門技能の力を身に付けさせることを目的としており、異常処置能力を高めるため不良のメカニズムを学ぶ研修を立ち上げました。
保全員育成のために立ち上げた「保全技能伝承道場」では、ロボット化・IT化に対応すべく、応用レベルの研修を追加しました。さらに現場では協働ロボット活用による自働化推進のため、一般技能員に対してもロボットティーチング技能の研修を行っており、2022年度からは「協働ロボット活用による既存工程の自動化推進者育成のカリキュラム」を作成し、自動化推進者への研修も行っています。
「金型技能伝承道場」では、国内、および海外拠点の金型保全員を対象に「基礎技能研修」、「トレーナー研修」を行っており、延べ100名が巣立っています。2020年から国内の若手生技員向け「基礎技能研修」を立ち上げ、延べ30名が受講し、本来業務に活かされています。
また、2017年から「技能五輪」への挑戦をはじめ、本来業務に関連する高度な技能と知識を習得することで、将来、生産現場で活躍できる若手の人材育成にも取り組んでいます。これらの育成取り組みを続けることで、当社を支える、「強いモノづくり現場」を実現していきます。

VUCA時代のプロジェクトリーダー研修
当社では「問題解決」を柱とした育成に加え、事業環境変化への対応や経営戦略の実行に必要な専門性や能力・スキルの開発が必要と考え、新たな価値創出や業務の革新をリードするための新しい発想・アプローチ等のスキルを学ぶ研修を開講しました。育成対象とするプロジェクトリーダーのタイプは、①新規ビジネス・新製品の創出を行う「ビジネスリーダー」②デジタル人材を指揮して、DXを推進する「DXリーダー」の2タイプになります。この研修は、2022年9月より、本格的に実施しています。

DX推進を担う「デジタル人材」の育成
ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、生産工程や製品の刷新、またビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争優位性を勝ち取るため、DXを推進していきます。このDX推進を図る人材の育成が急務であり、2022年1月より、新たな教育を導入し、デジタルコア人材の育成を図っています。
これにより、業務の革新や市場での競争力の確保ができ、市場の変化に対し、柔軟かつ迅速に対応ができる組織へと成長していきます。
■デジタル人材育成の体系
必要なDX人材 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2025年度までの累計目標 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
データサイエンティスト | 大量のデータから必要な情報を抽出・分析し業務改善へ反映できる | 目標 | 57 | 27 | 24 | 150 |
(実績) | 57 | 72(20) | 35(14) | ‐ | ||
デジタルアーキテクト | 最新のクラウド技術などに精通し実装ができる | 目標 | 24 | 25 | 20 | 100 |
(実績) | 24 | 30(8) | 24(6) | ‐ | ||
DXリーダー | デジタル人材を指揮してDXを推進できる | 目標 | 0 | 6 | 3 | 20 |
(実績) | 0 | 6 | 3 | ‐ |
- ※()内は、関係会社の認定者数
多様な人材のウェルビーイングの実現
事業の持続的な成長のために、「ウェルビーイングの実現」は不可欠であると考えています。その実現に向け、従業員が入社後に体験するエクスペリエンスを通じて、心理的安全性の確保やエンゲージメントの向上に取り組んでいます。
心理的安全性の確保という点では、双方向のコミュニケーションを軸に、労使間の対話を活性化し、従業員が安心して本音を語れる風通しの良い職場づくりを推進してきました。特に、職場での上司との関係は従業員一人ひとりが活力を感じるうえでも重要であり、マネジメント改革を通じて、思いやりと信頼に基づく「安心できる居場所づくり」の整備に取り組んでいます。
さらに、従業員が当社で働く意義を実感することが、仕事への目的意識やエンゲージメント向上につながると考え、「ビジョンへの共感」を促進する施策を展開しています。従業員が自らキャリアを築き、成長する機会を得られる環境づくりにも注力し、一人ひとりが「活躍できる舞台」で輝けるよう支援しています。

エンゲージメントを支えるエクスペリエンス
2021年より、従業員エンゲージメント向上をねらい、国内外出向者も含めた全従業員を対象に、エンゲージメントサーベイを開始しました。2015年より進めてきた風土改革の取り組み効果を確認しつつ、当社への帰属意識や仕事への貢献意欲を示すエンゲージメントスコアを把握することにより、さらに働きがいのある職場づくりに向けての施策を推進してきました。サーベイの回答率は、開始以来97%を下回ることはなく、また「サーベイによって前向きな変化が起こることへの期待」を問う設問のスコアは66%を下回ることなく、現在に至ります。
2024年より、多様化する価値観や社会環境の変化をふまえ、従業員一人ひとりのウェルビーイングを実現するために不可欠な「心理的安全性」と「エンゲージメント」を支える「エクスペリエンス(仕事やキャリアが従業員の期待に沿った体験となっているかを測るもの)」を確認するためにサーベイを更新。この変更に伴い、エンゲージメントを測定する設問を5問から3問へ変更※1しました。目標値については維持し、2025年には70%を目指します。サーベイ結果に基づき、一人ひとりのモチベーションの源泉を把握し、より高いエンゲージメント、その先にはそれぞれのウェルビーイング向上につながることをねらい、「従業員目線」で期待に沿ったマネジメント施策を実施しています。
エンゲージメントスコア推移

- ※1 エンゲージメントスコア:以下3設問の肯定的回答率(5段階中4,5)の平均値
・私は、業務上期待されている以上の貢献をしようと思う
・私は、仕事を通して個⼈として達成感を感じている
・私は、当社で働くことを、知⼈に積極的に勧めたいと思う
職場風土改革・マネジメント変革
2015年に労働組合が実施したアンケートにより、「内発的な働きがいが低い」との結果が示されて以降、職場風土改革を推進してきました。職場内のコミュニケーション促進、トップメッセージの発信、働きがいを高める委員会の発足、社外講師による講演会など、職場風土とマネジメントの両面から取り組みを継続しています。
エクスペリエンスサーベイの結果からは、これまでの取り組みにより、職場内の協力体制やコミュニケーションなど、職場風土の良化に一定の効果が見られることが分かりました。一方で、心理的安全性や上司がメンバーのやる気を引き出すことに関し課題があるため、2024年はマネジメント変革のさらなる推進と対話活動に力を入れていきます。

■マネジメント変革
全役員・管理職を対象に、精神科医による「人間力OMOIYARIコミュニケーション研修(全5回)を3年間かけて実施します。(’23:第1回、’24:第2回、第3回、’25:第4回、第5回)これに加えて、職場のリーダー層を対象とした、外部講師による「心の通う職場づくり研修」を昨年に引き続き仕掛けていきます。
人間力OMOIYARIコミュニケーション研修
受講者数:1,207名(23年度 第1回)
心の通う職場づくり研修
受講者数:係長156名 グループリーダー275名
■対話活動
上記研修の成果を発揮する実践の場として、各職場でトップ層や部門長とメンバーが対話するラウンドテーブルミーティングを実施します。
活力・一体感のある風土づくり
当社では、職場の一体感醸成のために様々な全社イベントを実施しています。今年で8回目となる「全社駅伝大会」では、グループ会社、取引先からの参加も含めて約1,040人の選手が出場し、職場や家族など約1,000人が応援に駆け付けました。これ以外にも、森町工場で行われる「森町納涼祭」や、従業員の家族を会社に招待する「ファミリーデー」なども実施しています。また、残念ながら台風により2024年は中止となりましたが、例年は家族の絆や地域との交流を深める「TGフェスティバル」を実施し、各ブロック対抗運動会TGオリンピックなどで大いに盛り上がっています。イベントを通して従業員間、そして地域の連携をさらに強化するとともに、日頃のサポートや理解と協力に感謝し、おもてなしの気持ちを込めてイベントを企画しています。
ビジョンへの共感
2030事業計画が策定され、そこに込められた想いを伝えるために、トップ自らが各職場をまわり、メンバーや労働組合執行部と直接対話する機会を設けました。これに加え、2024年には、各本部のトップが、当社の将来や事業に対する想いを語る「想いを伝える会」をすべての本部で開催します。
一人ひとりが2030事業計画を自分ごととして捉え、自身がどう関わるかを考えることが、仕事への目的意識を高め、関与を強めます。経営層や管理職がメンバーと向き合い、一人ひとりに「あなたには、こう貢献して欲しい」と納得できるように導くために、今後も対話の機会を作り、ビジョンの浸透だけでなく、共感をはかっていきます。
キャリア自律支援
中堅・若手社員の成長意欲促進をねらい、2021年に働きがいを高めるワーキンググループを立ち上げました。その中で、キャリア形成施策を「ワク・キャリ活動」と名付け、「キャリアの見える化」「意識醸成」「キャリア形成促進」を取り組みの3本柱として、全社施策へつなげています。
これらの取り組みにより、中堅・若手(20代、30代)のエンゲージメントが年々向上し、手応えを感じています。一方で、50代、60代には課題があると認識しています。役割やキャリアデザインなど、上司との対話を通して、モチベーション向上を図ります。
■ワク・キャリ活動の取り組み事例

企業価値向上の取り組み
当社では、福利厚生の充実をねらい、従業員の財産形成の一助とすることに加え、一人ひとりが当社の株主との一層の価値共有を進めるとともに、経営への参画意識の向上を図ることを目的に、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度を導入しました。
持株会加入率:45%→84%へ(2024年10月時点)
人権の尊重
基本的な考え方
当社グループは、「世界人権宣言」や「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際規範を支持・尊重するとともに、「豊田合成グループ行動憲章」において、「人権や個人の多様性・人格・個性を尊重し、差別的行為やハラスメント行為等を行わず、労使協調のもとで常に健全で働きやすく安全な職場づくりを努めます」との基本方針を定め人格・人権の尊重、公正な採用、強制労働や児童労働およびあらゆる形態のハラスメントの禁止を明言しています。
■人権方針の策定
これまでの人権に関する取り組みをさらに加速させるため、2022年4月に「豊田合成グループ人権方針」を策定しました。本方針は、外部有識者の助言を踏まえて作成し、全役員と本部長が参加するサステナビリティ会議での審議を経て、取締役会で承認されております。
人権方針では、すべての取引先をビジネスパートナーとして認識し、私たちのビジネスパートナーおよびそのほかの関係者が人権侵害に関与している場合、私たちは当該関係者に対し、人権を侵害しないよう働きかけることを宣言しています。
なお、サプライヤーの皆さまに対しては「仕入先サステナビリティガイドライン」を共有し、実践を要請しています。
体制
人権尊重に対する取り組みは、取締役が出席する会議体で議論し、その結果について取締役社長を議長とするサステナビリティ会議で報告しています。また、経営企画部、人事部、調達部、法務部など関連する部門で定期的に連携を図り、人権の取り組みの推進を行っています。
人権デュー・デリジェンス
「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、同原則で記されている人権デュー・デリジェンスを2022年に開始しました。
人権デュー・デリジェンスとは、企業の事業、サプライチェーンおよびその他のビジネス上の関係に関して、人権への負の影響を特定し、その負の影響を防止・軽減し、実施状況および結果について追跡調査を行い、どのように負の影響に対処したかを伝える一連のプロセスを指します。
■人権に関する取り組みの全体像

人権影響評価
人権デュー・デリジェンスの一環として、まずは当社グループ内を対象とした人権影響評価を外部有識者と共に実施し、当社グループ内における優先的に取り組むべき人権課題(顕著な人権課題)を特定しました。なお、国内外サプライチェーンについても、優先課題の評価を実施しており、24年度内に開示予定です。
当社グループの事業活動や製品・サービスに関連する人権リスクの全体像を把握するため、まずは机上調査を実施し、当社グループのバリューチェーン上の⼈権リスクを洗い出しました。また、当該調査の結果、当社のグループ会社に対してはアンケートによる書面調査を、またリスクが高い国・地域においてはヒアリングを実施し、取り組みの実態や課題を確認しました。
その後、これらの調査内容を踏まえて各人権課題の評価・優先順位付けを行い、当社グループ内における顕著な人権課題を特定しました。
■人権影響評価のプロセス
-
机上調査
- 当社グループの業種や取扱品目、国・地域、企業固有の人権リスクを、国際機関・政府・NGO等が公表する指標やレポート、社内文書、外部有識者の知見を活用し、網羅的に抽出
-
ヒアリング・書面調査
- 書面調査:当社グループ全体に向けてwebアンケートを展開し、各社の状況を網羅的に調査
- ヒアリング:机上調査の結果、高リスクとなった国・業種の当社グループ会社を対象としたヒアリングを実施し、マネジメント状況や過去事例などを調査
-
優先順位付け・
顕著な人権課題の特定- 机上調査・書面調査・ヒアリングの結果を踏まえて、人権の影響度を評価
- 評価結果をもとに、外部有識者との協議を行いながら、当社グループとして優先して取り組むべき人権課題を経営層の承認を経て、「顕著な人権課題」として特定
評価の結果、今後マネジメント体制を強化する必要があり、優先的に取り組むべき豊田合成グループの顕著な人権課題として以下の3つの課題が特定されました。
特定された顕著な人権課題については、負の影響の防止・軽減への取り組みを関連部門と連携し、推進していきます。また、人権を取り巻く状況は常に変化するため、今後も人権影響評価を定期的に実施します。
- ※なお、評価の過程において「労働安全衛生」も重要な人権課題として挙がってきましたが、「労働安全衛生」はグループ全体におけるマネジメント体制が確立されており、PDCAサイクルに基づいた取り組みが進められているため、人権デュー・デリジェンスとして対処していく優先課題としては除外しました。
■当社グループ内における顕著な人権課題
顕著な人権課題 | 影響を受けるステークホルダー | 内容 |
---|---|---|
ハラスメント |
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移民労働者 |
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ダイバーシティ& インクルージョン |
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|
■人権リスクマトリクス

取り組み
■従業員への啓発・教育活動について
当社では、これまでも入社時、昇格時などの機会において人権尊重の教育を実施してきましたが、「豊田合成グループ人権方針」策定を踏まえ、外部講師によるウェルビーイングやDE&Iをテーマにした講演会、社内報での人権方針解説書、事技職向けオンライン研修、技能職向け啓発ツール展開を実施しています。ハラスメント・差別のない職場創出のための通信を毎月発行し、また、人権問題を専門的に学ぶ社外研修に人事担当を派遣するなどして、人権感覚に優れた担当者の育成にも取り組んでいます。
対象 | 内容 | 頻度 |
---|---|---|
管理職 | 人権の基礎知識およびハラスメント、アンコンシャスバイアス研修を実施 | 1回/年 |
全従業員 | 人権に関する基礎的な内容をe-learningで展開 | 1回/年 |
人権担当者 | 基本的な知識や動向などについて、外部勉強会に参加 | 随時 |
グループ会社管理職 | 人権の基礎知識およびアンコンシャスバイアス研修を実施 | 1回/年 |
■ハラスメント防止
役員、管理職、監督者などへの研修とともに、月1回程度の「TG 明るい職場応援団」のレポートを展開し、職場で読み合わせを実施し、全従業員がハラスメント行為のない、健全で働きやすい職場づくりに努めています。特に全監督者以上には、ハラスメント低減に向けた研修を継続的に行っております。
■外国人技能実習生
2023年には国内グループ会社へ雇用状況の調査を書面で実施し、6社で計78名の実習生を受け入れていることを確認しました(2023年7月時点)。各社にはJITCO発行と同様の職場環境、安全健康、書類管理などの自主点検を実施いただいたうえで、全てのグループ会社へ赴き、実習生へのヒアリング、職場見学など現地調査を行いました。一部不備があった点については当社から指導し、即時の是正を実施いただくことで、人権侵害につながるような違反はないことを確認しました。調査では、ベトナムからの実習生が過半数を占めていることを把握し、適切な手数料請求に向けた取り組みも進めています。
■労働者の権利の尊重
当社では、各国の該当法令に基づいて、従業員が自由に結社する権利や団体交渉権を尊重しています。従業員が経営層へ、報復、脅迫、嫌がらせをおそれずにオープンで直接コミュニケーションできる権利を保証しています。私たちは現地法を遵守しながら、労働者の権利を最大限守るため、その方法をサポートしています。
■過重労働の防止および適正な給与
労働時間や休日については、各国の労働関係法令で定められた基準を遵守するとともに、海外を含めた全従業員に労働基準を守ることを冊子の配布を通じて、周知しています。
長時間労働・過重労働の防止に向けて総労働時間の実績を管理し、軽減策に取り組んでいます。また従業員に対する給与の設定にあたっては、各地域の最低賃金を満たしていることを確認しています。
■強制労働・児童労働の禁止
当社は、各国の法令を遵守し、子どもの教育機会を奪い、その発達を阻害するような早い年齢から仕事をさせる児童労働を行いません。暴力、脅迫等によるあらゆる強制労働や人身取引を含むいかなる形態の現代奴隷も行いません。
外国人労働者との労働契約の締結に際し、外国人登録証明書等によりその資格が就労が認められるものであり、年齢も問題ないことを確認を行っています。加えて、労働者のパスポートなどの身分証も会社で保管を行うことはせず、本人の選択に基づく居住の移転を自由にできるように努めています。
■社会/人材育成の促進
当社で働く上で必要な能力・スキルの向上のために、仕事の基本である「問題解決力」「コミュニケーション」を柱とした「チームで働く力」、そして強い現場力のための「基本技能」の3つの柱で人材育成を促進しています。また、事業環境の変化へ対応するため、変革を実現する「プロジェクトリーダー」の育成や、DXを推進するための「デジタル人材の育成」の研修も実施しています。従業員のキャリア自立に向けては、キャリアデザイン研修なども実施し、eラーニングでの自己研鑽も促し、自ら考え、行動ができる、自発性の高い従業員の育成にも取り組んでいます。
■国内外グループ会社への取り組み
国内外グループ会社に対しては、各国法令や「豊田合成グループ行動憲章」に沿った人事労務コンプライアンスの管理状態を把握するため、2017年より、グループ61社(2023年4月時点)を対象に自主点検調査を実施しています。定期的に、グループ内で人権やハラスメント、D&Iに関わる勉強会を開催し、ノウハウの共有を行い、各社の改善活動につなげているとともに、本社社員が現地を訪問し、グループ会社従業員への研修を行っています。
■サプライチェーンの人権尊重の取り組み
当社では、サプライチェーンにおいても、人権の侵害あるいは人権侵害へ加担しないように取り組みを進めています。国内外グループ会社同様の手順で書面調査、ヒアリング等を実施し、下記をリスクとして特定しました。
区分 | 顕著な人権課題 |
---|---|
国内仕入先 | ハラスメント、移民労働者(外国人技能実習生)、DE&I |
海外仕入先 | 児童労働、強制労働、移民労働者 |
「仕入先サステナビリティガイドライン」の中に、強制労働・差別禁止など人権尊重に必要な項目を盛り込み、サプライヤーの皆様へご理解と実践を頂くことを要請のうえ、潜在リスクへの気付きと早期対策を目的にチェックシートを提供し、自主点検調査を実施いただいています。
また、サプライヤーとの連絡会などを活用し、定期的に人権啓発活動を行っています。
今後も、負の影響の防止・軽減への取り組みを当社とサプライヤーで連携し、推進していきます。
■苦情処理メカニズム
当社では、当社および国内グループ会社の従業員が利用可能な社内/社外窓口を設けています。匿名での相談・通報も可能であるとともに、相談・通報を理由とした不利益な取り扱いを受けないように、相談者・通報者の保護に努めています。
さらに、ハラスメント・育児・介護、障がい者就業支援などに関する社内相談窓口も設置しており、従業員が互いを尊重しながら働くことのできる職場環境の整備に努めています。
また、サプライヤーからの相談・通報についての「仕入先様相談窓口」も設置するとともに、ホームページの「お問い合わせ」を通じ、あらゆるステークホルダーからの相談・通報が可能となっています。会社HPにおいて、問い合わせ窓口を案内することで、地域住民など社内外全てのステ-クホルダーからの通報も受け付ける仕組みも構築しています。
■ステークホルダーとの対話
当社では、関係部門で連携を取りながら、「従業員」・「株主・投資家」・「地域社会」・「仕入先様」など様々なステークホルダーの皆様と定期的な対話機会の設定や必要情報の開示などを積極的に行っています。
■人権および労働に関わるコンプライアンス違反などの状況
当社グループにおいて、2023年度は、人権侵害および労働に関する法規制などの違反および重大なコンプライアンス違反の発生はありませんでした。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
基本的な考え方
多様な価値観や新たな視点・考え方を経営に取り入れるため、これまでもあらゆる属性の人々の採用・育成・登用を積極的に進めてきました。2020年からは、多様な人材が受け入れられ、活躍できる居場所と舞台を作り、「インクルージョン」につながる風土醸成、制度、教育体系の構築に注力しています。
2023年には当社のダイバーシティ活動を浸透させるため、シンボルマークとスローガンを社内で募り、「DE&Iみんなで進もう多彩な未来へ」に決定しました。

DE&I活動の重点取り組み
DE&Iの取り組みにおいては、多様性を理解し、学び、ともに支え合い、行動につなげることを軸として、アクションプランを策定しています。
外部講師による講演会、有志を募り活動を企画するコミュニティ活動の実施、啓発イベントとして「おもいやり月間」を設けるなど、全従業員の意識向上をねらいとして、以下のような重点取り組みを実施しています。

重点取り組み | 概要や主な活動 | |
---|---|---|
①女性活躍 | 事技職 |
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技能職 |
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②障がい者 |
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③両立支援 |
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④LGBTQ |
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■女性活躍
製造業の傾向として女性従業員比率が低く、男性従業員が標準となっている職場環境、ロールモデルの不足により、当社において女性管理職の登用・育成が遅れていました。そのため、女性管理職登用の目標数を2025年までに45名、2030年までに100名とし、女性活躍の施策を加速させています。
具体的な施策としては、スタッフ系従業員には、自身をまず知り、強みを活かしたリーダーシップ像を描くための「エンカレッジプログラム」を開設しました。一方、製造現場の従業員向けには、女性リーダーを中心に誰もが働きやすい職場環境づくりに向けた取り組みを始めました。
直近の施策としては、より女性が働きやすい職場にするために、女性トイレに生理用品棚を設置したり、工場ごとに女性相談員を配置し、気軽に相談できる環境づくりなどを進めています。また、モチベーション向上施策として、他社製造業との交流を積極的に行い、製造現場における多様な女性活躍のロールモデルを知り、学ぶ機会を設けています。
■障がい者雇用
これまでも当社では、障がいを持つ方々の製造現場での採用を進めてきました。製造現場で働く日常のイメージを持ってもらえるよう、特別支援学校と連携しながら採用前のインターンシップを実施しています。実務を体験することにより、入社後は職場に早く馴染むことができ、その後の活躍につなげることができています。
また、2024年度からは、スタッフ職での採用強化を図っています。受け入れ職種の拡張や、障がい者向け就職セミナーへ積極的に参加し、選ばれる企業となるよう取り組みを進めています。また、当社で長く働いて頂けるよう各事業所に生活相談員を配置し、定期ケア面談による困りごとの吸い上げなど、働きやすい職場環境づくりも継続しています。
■両立支援
育児・介護・加療をしながらも自分らしく仕事との両立が実現できるしくみづくりと、「おたがいさま精神」で助け合うことができる職場風土の醸成をねらいに活動を推進しています。2023年より、55歳以上の従業員を対象に、介護に直面した場合でも仕事との両立が図れる基礎知識(地域包括支援センターなど行政との連携など)や簡単介助方法を学ぶセミナーを開催しています。育児についても、育児・介護休業法の基準を上回る制度(2歳まで育休、学校行事などに利用できる特別休暇など)を導入し、両立支援に力を入れています。
また、上司・職場に対しての育休取得の啓発活動などを積極的に行い、男性育休の取得率も大幅に上昇しています。このような活動が認められ、2024年度には「プラチナくるみん」の認定を受けました。
■柔軟な働き方と活躍促進を支える制度環境の整備
仕事と育児・介護・加療との両立支援について、法定以上の制度に加え、お互いを思いやる職場風土の醸成を進めています。2030年の会社目標である男性育休取得率100%達成に向けて、制度だけでなく上司向けセミナーや社内報啓発など、ともに支える理解活動を積極的に行っています。これらの取り組みが評価され、2024年度に「プラチナくるみん」の認定を受けました。また、介護についても55歳以上の従業員を対象に、介護に直面した場合でも仕事との両立が図れる知識を学ぶセミナーを実施したり、2024年度から40歳の節目年齢での介護制度・介護保険の説明会も開始しました。ワークライフバランスの実現に向けて、両立支援や柔軟な働き方により、誰もが安心して働きがいを持ち続けながら活躍できる環境づくりに努めています。
育児支援に関する主な制度
- ※2 4時間勤務は小学1年、6・7時間勤務は小学4年まで
介護支援に関する主な制度
仕事と加療の両立支援制度
- 短時間勤務
- 短日勤務
- テレワーク上限回数の緩和
全社平均残業時間 [単体]
男性育児休業取得者数と取得率[単体]※4
- ※4 該当年度に育児休業を開始した人数
年休取得率 [単体]
- ※3 新型コロナウイルスの影響により、休業あり
男性育休取得の促進をねらいに「次世代法・女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」を更新(24.3.29)
■LGBTQ対応
2023年に「パートナーシップ制度」を導入し、性的指向や性自認、性別にとらわれずいきいき自分らしく働ける環境づくりをねらいに、管理職向け講演会や社内ガイドブック作成などを進めています。このような活動が認められ、2024年度PRIDE指標シルバーを受賞しました。
その他の活動
■キャリア採用社員への取り組み
当社では、当社にはないノウハウや知識を取り入れるべく、キャリア採用を行っています。2024年からは外国籍社員の採用や、女性活躍をさらに進めるべくオープンポジションでの採用など新たな取り組みも始めました。現在、キャリア採用者数は従業員の約30%を占めており、入社後は導入研修や各職場での教育、また人事担当者が困りごとのヒアリングを行うなど、活躍できる職場環境づくりに取り組んでいます。
中途入社数の推移
■シニア従業員のさらなる活躍の促進
今後ますます増加するシニア従業員が、60歳を区切りとせず安心感と高い意欲をもって活躍し続けられる環境を整備するとともに、シニア従業員の豊富な経験や技術・スキルと若手従業員の発想・着眼等を融合し、新たな価値を生み出していきます。その基盤づくりのため、2022年4月より定年年齢を60歳から65歳へ引き上げました。今後、65歳まで意欲高くいきいき働き続けることを後押しする下表のような取り組みを継続していきます。
年齢に関わらず、最大限の能力発揮ができる環境づくりに向けた活動を継続し、エンゲージメントのさらなる向上を図ります(目標:従業員のエンゲージメント(50代・60代)の肯定回答率65%以上)。
例えば、「意欲向上」の取り組みとして、50代の従業員を対象にキャリア研修を実施し、「今後の働き方」や「これまで培った技術・技能・経験をどのように職場で発揮していくか」等を、同世代と意見交換しながら改めて考える場を設定しています。
また、「健康・体力向上」の取り組みとして、「節目年齢での健康セミナーの実施」や「食堂メニューの見直しによる食生活の改善」など、従業員と定期的に議論しながら、健康増進に向けた活動を強化しています。
意欲向上 |
|
---|---|
健康・体力向上 |
|
職場環境整備 |
|
安全衛生
基本的な考え方
安全衛生・健康に関する基本理念
豊田合成グループでは安全と心身の健康の確保を最も重要な経営課題のひとつと位置付け、全ての事業活動において安心で働きやすい職場環境を確保します。
安全衛生の取り組み
豊田合成グループでは上記基本理念に基づき、安全衛生宣言を定めて企業活動を展開しています。
安全衛生宣言
- 1. 安全衛生に関する法律、社内規定を順守します。
- 2. 「安全は全てに優先する」を心に刻み、一人ひとりが「安全最優先」で行動することを徹底します。
- 3. 当事者意識を持って活動に取り組み、全員参加で相互啓発型の安全文化の醸成を図ります。
推進体制
安全健康推進部担当本部長を議長として、取締役社長・労働組合委員長・国内事業場の全工場長および国内外子会社社長が出席する中央安全衛生委員会(4回/ 年)を組織し、安全衛生に関する諸施策の報告・審議を行い、その結果を取締役会に報告しています。
中央安全衛生委員会の審議結果に加えて、年初の社長メッセージや社内報による安全情報の発信を繰り返し実施することで、豊田合成グループが一丸となって活動を推進しています。またサプライヤーについても、調達連絡会などを通じて定期的に各種関連情報の共有化を図っています。
目標と実績[グローバル]
当社の敷地で働く全ての人が、出社した時の元気な姿で帰宅できることが会社の責務であるとの考えから、無事故・無災害の実現を目指してグローバルで重大※5災害・重篤※6なSTOP7※7災害件数0件を目標に掲げ、各種諸施策を推進してきました。2023年度グローバルにおける実績としては、重大災害0件の目標は達成することができましたが、海外子会社にて「挟まれ・巻き込まれ」に該当する重篤なSTOP7災害が2件発生しました。
■2023年度グローバル目標達成状況(請負会社・工事業者 含む)
実績 | 評価 | ||
---|---|---|---|
重大災害件数 | 0件 | 0件 | ◯ |
重篤なSTOP7災害件数 | 0件 | 2件 | × |
- ※5 重大:死亡
- ※6 重篤:被災者の身体の一部(または機能)を失った状態
- ※7 STOP7:大きなケガが起こる可能性がある7つの事象①挟まれ・巻き込まれ②重量物③墜落・転落④感電⑤車両⑥高温物・爆発・ガス⑦切断
■グローバル重大災害・重篤なSTOP7災害発生状況
(請負会社・工事業者 含む)

具体的な取り組み
■安全衛生マネジメントシステム
労働安全衛生水準の継続的改善を図るため、労働安全衛生マネジメントシステムをグローバルで導入・運用しています。
国内はOSHMS認証取得後、内部統制項目を追加した当社独自のシステムで全23拠点が自主運用しています。海外では31拠点のうち、約45%にあたる14拠点がISO45001の認証を取得しています。
- 2024年12月時点
ISO45001 認証会社 |
OSHMS 認証会社 |
自主運用 会社・工場 |
|
---|---|---|---|
豊田合成(11工場) | ― | ― | 11 |
国内子会社(12社) | ― | 4 | 8 |
海外子会社(31社) | 14 | 1 | 16 |
■設備のリスクアセスメント
設備の設計・製作段階での危険要因排除を目的として、設備計画部門が新設・改造・移設時に「設備のリスクアセスメント」を行っています。またその設備を使用する前段階で、当社独自の「設備安全基準」への適合性評価のための安全衛生チェックを行い、安全性の確認も行っています。
■作業のリスクアセスメント
製造部門では、職場の危険性または有害性の調査および対策として「作業のリスクアセスメント」を行い、リスク低減措置を確実に実施することで災害の未然防止につなげています。

■安全衛生教育
職位や受講が必要な時期に合わせて教育カリキュラムを定め各種教育を行っています。従来の面着教育に加えて、「Web教育※8」も実施しています。
また当社の全事業場には、過去災害の風化防止と危険体感教育を行うための「安全道場」を設置・運用し、グローバルにも展開しています。
安全健康推進部主催の安全衛生教育と受講者数(2023年度)
研修・教育名 | 対象者 | 内容 | 集合教育 | Web教育※7 | 受講者数 |
---|---|---|---|---|---|
工場長・サイト長研修 | 工場長・サイト長 |
|
○ | 11 | |
技能職中堅社員研修 | 技能職の次期監督者候補者 |
|
○ | 37 | |
新任監督者・TL安全衛生教育 | 新規昇格者/ 登用者 |
|
○ | 95 | |
新任基幹職安全衛生教育 | 新規昇格者 |
|
○ | 46 | |
設備安全教育 | 生技・製技部門の管理監督者 |
|
○ | 101 | |
海外赴任前研修 | 海外子会社出向予定者 |
|
○ | 10 | |
海外TOP,No.2赴任前研修 | 海外子会社出向予定者 |
|
○ | 56 |
- ※8 Web教育:Web上で行う双方向でのコミュニケーションが可能な学習方式
■国内外子会社の安全確保
国内外子会社の安全・防火レベルの視える化と弱点の底上げを目的に、2020年度より「SFPM(安全・防火カルテ)」を展開しています。
2023年度も各社の自主評価結果をふまえた統一強化項目を設定し、国内子会社に対しては、各3回/年(13会社:計39回)の現地現物現認による監査・支援を行っています。
海外子会社44社については、各社の評価結果(活動内容)を定期的にWebミーティングで確認しています。その結果更なるレベルアップが必要と判断した子会社に対しては、動画や資料を活用したWeb指導会(1回/月)や現地現物での監査・指導(3回)を行い、更なる安全レベルの向上につなげています。
労働災害の発生状況と対策
2023年度に発生した「挟まれ・巻き込まれ」に該当する重篤なSTOP7災害は、2件とも設備が回転しているのにもかかわらず手を入れて被災しまったというものでした。災害の再発防止に向けて、回転部に手を入れる「怖さ」「悲惨さ」を再認識させることと拠点長をはじめとした管理監督者が現地現物で確実に巡視を行い、異常に気付いたら全員で共有し、即指導・是正する活動を徹底して行ってきました。
災害件数が増加傾向にあることから、 2024年度は危機感を自分事として改善を進めることができる企業風土を目指して、今一度原点に立ち返った人/ソフトと設備/ハード両面の安全対策をグローバルで展開しています。
■グローバル 重篤なSTOP7災害発生状況
■グローバル 労働災害発生率(休業度数率)の推移
■2023年度 豊田合成の安全成績[単体]
当社以外の安全成績 出典: 厚生労働省「労働災害動向調査結果(事業所規模100人以上)/ 調査期間:1月~12月」
項目 | 算出式・開示方法 | 豊田合成 | 輸送用機械器具 製造業 |
製造業 |
---|---|---|---|---|
年度(4~3月) | 年(1~12月) | |||
労災により失われた時間 (死傷者1人平均の労働損失日数) |
死傷者1人平均労働損失日数: 【参考】損失日数: |
2.9 | 73.7 | 58.0 |
労災の件数(休業災害度数率) |
休業災害度数率:
|
0.31 | 0.60 | 1.29 |
労災の件数(全災害度数率) |
全災害度数率:
|
1.7 | 3.01 | 4.28 |
労災による死亡者数 | ※新型コロナウィルス感染症への罹患に死亡者数を含む | 0 | 6 | 36 |
健康経営
基本的な考え方
豊田合成グループで働く全ての人が心身共に健康であり続けるために、健康経営活動を推進しています。
健康宣言~「限りない創造 社会への奉仕」実現のために~
- 1. 従業員の健康を重要な経営課題と考え、安全と心身の健康を最優先する組織風土を醸成します。
- 2. 従業員がいきいきと働けるよう、明るく活気ある職場、人づくりに取り組みます。
- 3. 従業員と家族の健康増進を図るため、健康意識を高め、疾病予防に取り組みます。
推進体制
中央安全衛生委員会※9の下部組織として、健康経営の拡充を目的に「健幸推進協議会」を年4回開催しています。この協議会では健康だけではなく、「幸せ」に働くことを目指し、安全健康推進部を事務局に、産業医・人事部・健康保険組合・労働組合が一体となって、健康経営・幸福経営活動の協議を行っています。また、協議・決定事項は各事業所の安全衛生委員会へと展開しています。
- ※9 安全健康推進部担当本部長を議長として、取締役社長・労働組合委員長・国内事業場の全工場長および国内外子会社社長が出席する
健康経営の取り組み
経営理念に掲げる企業の社会的責任を果たすための基盤強化として、従業員一人ひとりが将来にわたって、いきいきと健康に働けることが必要不可欠であるという認識のもと、従業員の健康維持・増進のため、健康経営に取り組んでいます。
健康経営の取り組みや成果を定量的に示し、活動のPDCAを回すことを目的に、「健康投資管理会計ガイドライン」に基づく「戦略マップ」を作成し、今後は投資・効果・資源を定量的に評価し、健康経営を継続的、効果的に推進します。
戦略マップでは、健康経営で解決したい経営課題として「相互啓発型の健康文化の醸成と定着」とし、最終的な目標指標を①アブセンティーズムの低減 ②プレゼンティーズムの低減 ③エンゲージメントの向上と定め、活動をしています。
2021年度からは特にプレゼンティーズムの低減を重点活動とし、健康づくりや啓発活動を推進しています。
健康経営活動におけるKPI「健康チャレンジ8」の取り組み
2021年度より健康KPIとして定めている「健康チャレンジ8※10」の実践率を向上させるため、毎年部門ごとに集計したスコア結果を公開し、自部署の現状を確認する機会を設けています。
また、職場が主体となった健康づくり活動を推進するため、職場健康推進リーダー(健康UPレンジャー)制を導入しました。健康UPレンジャーへは毎月1回健康情報を発信し、活動の支援をしています。
- ※10 健康チャレンジ8:体重・朝食・間食・喫煙・運動・睡眠・ストレスの8項目
健康意識向上と行動変容への取り組み
「チャレンジ8」の目標達成のための取り組みの1つであり、活動開始から9年目を迎えた「職場単位の健康づくり活動」では、参加者数が年々増加し2023年度には、全従業員の94.4%となりました。活動リーダー中心にメンバーが楽しく工夫を凝らしながら健康づくりに取り組んでいます。チャレンジ8の結果では運動実施率の低さが課題となっていますが、参加チームの半数以上が“運動”をテーマにしており、関心の高さがうかがえます。
また、毎年の健康診断を従業員一人ひとりが「健康を考える日」とし、「健康ひとことおみくじ」「握力/脚力測定」など、保健師・看護師による健康の啓発活動を実施しています。
健康診断・精密検査の受診状況
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
健康診断受診率 | 100% | 100% | 100% |
精密検査受診率 | 83.2% | 84.5% | 70.2% |
特定保健指導・健康診断の充実
2022年 特定保健指導実施率 81.8%
積極的支援実施率 73.6% 動機づけ支援実施率 94.8%
2019年より、健康保険組合との協業による特定保健指導(積極的支援)の集団指導を取り入れました。
定期健康診断では、2020年1月から産業医判断で省略が認められている検査項目についても全ての社員に実施し、異常の早期発見と健康的な生活習慣の確立に活用しています。
健康診断有所見者に対しては、産業医等による保健指導を実施するほか、2022年度からは「年齢別保健指導」として、所見の有無にかかわらず4年おきに保健師との面談を実施。全従業員に自身の健康を振り返る機会を提供しています。
有所見者率/チャレンジ8(生活習慣改善率)の推移
これまでの健康づくり活動により、肥満率、血圧、血中脂質の有所見者率は減少、血糖の有所見率は上昇抑制しています。
また、生活習慣改善の指標となるチャレンジ8の実践率も良化しています。
■肥満率(BMI25以上)
■血圧 有所見者率
■血中脂質 有所見者率
■血糖(HbA1c)有所見者率
■チャレンジ8実践率の経緯
食生活の改善
2021年度に「おいしく食べて健康になろう」をコンセプトに、社員食堂をリニューアルしました。定食に「野菜しっかり」「たんぱく質しっかり」の健康メニューを取り入れ、ヘルシーかつ質・量ともに満足感が得られるような工夫がされています。また、その日に食べたメニューや栄養素、カロリーがスマートフォンで確認できるシステムを導入し、自己管理に活かしています。
がん対策
当社は、がん対策推進企業アクションの推進パートナー企業として、がん対策を実施しています。
個別面談や、節目健康教育、社内報・社内イントラなど様々な機会を通し、がんの早期発見の重要性の啓発や、人間ドック・がん検診の受診勧奨を実施しています。
また、健康保険組合では人間ドック・がん検診(郵送健診)の費用補助を実施しており、その受診率向上施策の1つとして、節目年齢における人間ドック特別休暇を付与し、受診しやすい環境を整えています。
女性の健康保持・増進に向けた取り組み
女性のがん検診受診率向上を目指し、2024年3月に「女性の健康週間」イベントとして食堂での特別メニュ―(ピンクリボンランチ)の提供、パネル・チラシ・デジタルサイネージでの情報提供をし、乳がん・子宮がん検診の啓発を行いました。また、特に受診率が低い20代へがん検診受診率向上のためのリーフレットを配布し、健診受診を呼び掛けています。
また、育児休暇から職場復帰する女性に対し、相談窓口の案内やセルフケア情報を発信し、健康の面からも育児と就労の両立を支援する取組みを行っています。
さらに、2022年からは女性の医療スタッフ(医師・保健師)による女性専用の相談窓口を開設し、健康相談に応じています。
禁煙対策
喫煙者の健康障害と非喫煙者の受動喫煙防止を目的に、 2012年にまず社内でのタバコ販売(自動販売機含む)中止から始め、同時に喫煙者への保健師による禁煙支援を実施し、2016年からは、外部講師を招いての「禁煙講演会」実施に併せて、肺年齢測定など体験型の「展示会」を開催して、禁煙への動機づけを実施してきました。
そして2020年4月から全面施行された「改正健康増進法」に先駆け、2020年1月からは、国内全事業所の敷地内禁煙を展開しました。その際には事業所の敷地内だけでなく、近隣住民の皆様の受動喫煙防止も考え、最低でも事業所から100m以内は禁煙地区とし、保育園や医療機関などがある場合には、その周辺も含めて禁煙地区に設定して活動を進めてきました。
社内で働く全ての人を受動喫煙による健康障害から守り、“望まぬ受動喫煙”を防ぐことを目的に会社の方針として掲げ、事前に従業員への地道な理解活動はもちろんのこと、派遣会社や請負会社にも繰り返し協力依頼を行ったことで、敷地内禁煙開始から1年が経過した現在、生産や離職に影響を及ぼすことなく継続できています。
全社の喫煙率は、2010年の42.5%から2023年は24.9%までに減少しています。
■当社喫煙率

メンタルヘルス不調者への対応と未然防止
年に1回、ストレスチェックを実施しセルフケアや早期発見につなげています。
また、保健師・看護師による個別相談や、メンタル専用相談窓口の開設、EAP※11(厚生労働省/社員支援プログラム)の導入と管理監督者への教育などを行っています。
2020年度からは、メンタルヘルス不調の影響が早期に出やすい「睡眠」に着目し、ウェアラブル端末を使って「睡眠の質の視える化」を図り、不調サインを早期にキャッチすることで、メンタルヘルス不調者の再発防止に取り組んでいます。
- ※11 EAP:従業員のメンタルヘルスを支援する社外専門家によるプログラム
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
ストレスチェック受検率 | 93.3% | 95.5% | 94.6% |
高ストレス者率 | 11.9% | 12.6% | 13.0% |
従業員の感染症予防
2020年福利厚生制度に麻しん、風しん等の抗体検査のための費用補助を追加しました。また、家族も含めてインフルエンザの予防接種費用の一部補助も実施しています。
新型コロナウィルス感染症対応として、政府の要請を受けワクチンの職域接種を本社地区・森町地区にてこれまでに4回実施しています。
「後天性免疫不全症候群(HIV感染症含む)、結核、マラリア」などの感染症法届出対象疾患の対応については、「危機管理対応ガイド」で予防および初動対応方法を明確にして周知を図っています。
各種健康教育
2021年度からはWebを活用した教育を積極的に取り入れ、基幹職に対し毎年メンタルヘルス教育を実施しています。また、年齢別のフィジカルヘルス教育※12も2021年度からは集合教育とWEB教育を併用をするなど、受講しやすさとコミュニケーションの取りやすさ双方に配慮した形となるよう工夫しています。
- ※12 フィジカルヘルス:各種健康診断の受診、生活習慣病の予防、喫煙対策や各種健康づくりなどの身体面における健康
教育名 | 対象者 | 対象者数 | 受講者数 | 参加率※()内は満足度 |
---|---|---|---|---|
ヘルスアップセミナー | 39歳従業員 | 105名 | 90名 | 86% |
しなやか健康教育 | 44歳従業員 | 140名 | 129名 | 91% |
メンタルヘルス教育 | 管理職 | 582名 | 373名 | 64%(82%) |
国内子会社/サプライヤーに対する健康経営の普及促進
当社では、国内子会社/サプライヤー支援として健康経営の促進活動を行っています。
2024年6月に国内子会社およびサプライヤーへ向け開催された「調達連絡会」において、当社の健康経営の取り組み紹介や、健康経営を推進することの重要性などを共有しました。
また、国内子会社へは健康保険組合の協力のもと、健康経営の推進活動を実施し、10社が健康経営優良法人2024の認定を受けています。
さらに、2024年9月には希望されたサプライヤーに対し、体験型の健康づくりセミナーを共同開催しました。
健康関連の指標評価
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
プレゼンティーズム損失率 (東大1項目版) |
- | 22.1% | 22.2% |
アブセンティーズム (疾病による14日以上の休業者率) |
2.9% | 2.9% | 2.9% |
ワーク・エンゲージメント 下記①~⑤の設問の肯定的回答率(5段階中4,5)の平均値 ①私は、当社で働くことを、知人に積極的に勧めたいと思う ②私は、仕事を通して個人として達成感を感じている ③私は、業務上期待されている以上の貢献をしようと思う ④私は、今のところ他社への転職は考えていない ⑤私は、当社で働くことを誇りに思う |
56% | 59% | 60% |
各種認定・表彰
- 健康経営優良法人2024
- スポーツエールカンパニー2024+
- がん対策推進優良企業表彰(2023年度)